【東日本大震災】思い出写真 甲子園で孫の雄姿見届け

いつもこの服装で、こうしてカウンターでお客さんと話していました。孫2人の甲子園の応援にも、この写真を持っていきました〉

そこに写るのは石巻市内で居酒屋「鐵平」を営んでいた夫の伊勢鉄夫さん=震災当時(71)。震災から数日後、がれき交じりの海水に浮いているのを見つけた。約2カ月前に常連客が撮ってくれたものだ。

あの日、伊勢さん夫妻は足の悪い常連客の夫婦を車に乗せ、山を目指した。車が進めないところまで来ると、「安全な場所まで2人を送ってくる」。それが最後に聞いた鉄夫さんの言葉だった。それから2週間余り。津波にのまれた鉄夫さんは遺体で見つかった。

「困っている人を放っておけなくて、口数は少ないけど、周りに慕われる人でした」

鉄夫さんが何より楽しみにしていたのが、野球少年だった2人の孫の成長。兄の千寛さん(21)は石巻工業高の中堅手として、震災翌年の選抜大会に21世紀枠で出場。昨夏には弟の隼さん(18)が東北高の中軸打者として夏の選手権大会に臨み、ともに甲子園球児となった。

「小さい頃から練習の送り迎えをして、試合も欠かさず見に行っていた。うまくなっていく様子をうれしそうに話していました」

昨夏、隼さんは鉄夫さんの遺影に「じっじ、絶対甲子園に連れていくよ」と誓い、約束を果たした。その甲子園が大歓声に包まれる中、玲子さんは静かに遺影に語りかけた。

「おじいさん、孫たちがここまで連れてきてくれたよ。それとも、おじいさんが力を貸してくれたのかな」

産経新聞

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