【東日本大震災】大震災6年 「ひな乃の笑顔のように咲いて」ヒマワリの種

【東日本大震災】大震災6年 「ひな乃の笑顔のように咲いて」ヒマワリの種

宮城・山元町で津波で犠牲 全国の幼稚園などに種を贈る

東日本大震災で送迎バスが津波に流され、園児ら9人が犠牲になった宮城県山元町の私立ふじ幼稚園。長女ひな乃ちゃん(当時5歳)を亡くした団体職員、高橋ひろみさん(52)=同県亘理(わたり)町=は、ひな乃ちゃんの笑顔に見立てたヒマワリを育て、全国の幼稚園などに種を贈る。高橋さんは「命の尊さと防災を考える大切さを忘れないでほしい」と訴え続けている。

ヒマワリは20センチ程度の背丈で大きな花を咲かせる「ビッグスマイル」という品種。高橋さんは笑顔の絶えなかったひな乃ちゃんを重ね合わせている。

震災後の2011年8月、大学時代の友人から「ひなちゃんそっくり」と種をもらったのがきっかけで、ふじ幼稚園や自宅の庭いっぱいに植えた。その後、「笑顔広がれプロジェクト」として、依頼のあった全国の幼稚園やイベント団体などに種8粒入りの袋を計8000袋無料配布し、芽吹く様子を撮影してもらい高橋さんが写真を動画投稿サイトにアップ。種は日本人の知人がいるドイツやフランスにも渡った。現在、高橋さんはプロジェクト代表を務める。

震災のあった3月11日、山元町の隣にある亘理町の勤務先で激しい揺れに襲われた。幼稚園とは電話がつながらず、ひな乃ちゃんのことが心配でならなかった。「きっと避難しているはず」と山元町役場に向かったが、園児らが幼稚園に取り残されていると知り、頭が真っ白になった。翌日救助された園児の中にひな乃ちゃんの姿はなかった。

自衛隊員の制止も聞かず幼稚園に向かい、4日間捜し回ったが見つからなかった。会社員の夫光晴さん(48)と遺体安置所を回り、震災から10日ほどしてひな乃ちゃんを見つけた。遺体保全のため抱き上げることもできず、白くなった顔を両手でなで続けた。

流産を経験し40歳で授かった子だった。ぜんそくで入院した経験からか「将来は看護師さん」と言い続けた。文字を練習した紙にはいつも「ママだいすき」と書き、震災の年の初詣は「お母さんが幸せになりますように」と手を合わせた。幼稚園の友達から「地震のとき『大丈夫』といってくれてありがとう」と手紙をもらった。「怖くてたまらなかったはずなのに、あの子らしい」と思った。

海から約1.6キロ内陸のふじ幼稚園では津波を想定した訓練をしておらず、津波が多くの幼い命を奪った。プロジェクトでは、種を贈るときに「それぞれの場所に応じた危険性を皆で考え、防災・避難計画を立てましょう」と防災メッセージを添える。ひな乃ちゃんの笑顔のような花を広めると同時に「悲劇を繰り返してほしくない」という思いがあるからだ。「天国で『お母さん頑張ったね』と言ってもらえるよう情報発信していく」。愛する娘のため、前を向いて生き続ける。

毎日新聞

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