【東日本大震災】<震災6年>亡き娘へ 中学の制服贈る

東日本大震災で6歳だった長女愛梨(あいり)ちゃんを亡くした宮城県石巻市の佐藤美香さん(42)が、中学校の制服を作った。この春、小学校を卒業して同市蛇田中に進むはずだった。

「愛梨の制服姿が見たい。せめて夢の中でもいい」。出来上がった制服に、成長した娘の姿を重ねる。

制服は2月28日、同市の制服専門店「富久屋(ふくや)」で手渡された。紺色で、左胸の裏地辺りにピンク色の糸で「愛梨」と刺しゅうされている。自宅1階の仏壇の前に制服を広げた佐藤さんは、「袖を通してね」と優しくなでた。

2011年3月11日。愛梨ちゃんは通っていた同市の私立日和幼稚園(休園中)にいた。激しい揺れの後、園のバスで自宅に送られる途中、津波と火災に巻き込まれた。小学校入学を目前にした幼い命が絶たれた。

04年5月31日に産声を上げた愛梨ちゃんは、体重3702グラム。大きな赤ちゃんだった。園の年長組の女児では2番目の長身。母親思いで、当時の短冊には「ままみたいになりたいです」とつづった。

「あの子の制服を作ってあげたい」。佐藤さんはそう願っていたが、葛藤もあった。「亡くなった子の採寸はどうするの」「嫌がられるのでは」

背中を押してくれたのは、園の同級生の母親だった。富久屋に確認して「大丈夫、制服を作れるよ」と教えてくれた。

佐藤さんは1月下旬、次女で小学3年の珠莉(じゅり)さん(9)と共に富久屋を訪れた。快く注文に応じた店長の鈴木儀子(のりこ)さん(63)は、愛梨ちゃんと珠莉さんの体格などを考慮して制服を大きめのサイズに仕上げた。

11日であの日から6年。自宅2階の愛梨ちゃんの部屋にある学習机には、今も水色のランドセルが掛けられている。珠莉さんは表紙に「卒業おめでとう!」と記したノートを姉の遺影に手向けた。

佐藤さんは蛇田中の入学式までに、制服を愛梨ちゃんの部屋のクローゼットへ移すという。「共に生きているつもり。もう年頃の女の子だから、自分の部屋で着替えるはず」

中学卒業後、娘がどこの高校へ進学するかはもう分からない。制服を作ってあげられるのは、これが最初で最後。七回忌の贈り物でもある。

河北新報

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