【東日本大震災】新たな家族 生きる力

【東日本大震災】新たな家族 生きる力

◎震災5年5カ月/6度目のお盆(4)村上知幸さん=陸前高田市

12歳の誕生日は5日、岩手県陸前高田市高田町の高台に再建し、住み始めたばかりの自宅で迎えた。

市職員の村上知幸さん(46)は仕事を休み、家族で次男祐太君=当時(6)=を祝った。

「おめでとう」。妹の長女結美(ゆうみ)ちゃん(3)が、イチゴのケーキに立てたろうそくの火を吹き消した。

リビングの一角に、写真や大好きなウルトラマンのグッズが並ぶ。野球ボールも置いた。

「野球をやるって言ってたもんな」

地元の高田高時代、全国高校野球選手権大会に出場した村上さんの後を追う祐太君の姿を思い返した。同級生は今年、小学6年生。野球の岩手県大会で3位になった。

祐太君は通っていた市内の保育所を祐太君の祖母幸子(こうこ)さん=当時(62)=と出た後、津波に遭った。祐太君だけ、まだ見つからない。

東日本大震災の当日、住民の避難誘導をしていた村上さんは、市役所屋上に駆け上がり、ぎりぎり助かった。

市長の秘書役や報道対応に翌朝から追われた。当初は、祐太君を自ら捜し回ることさえできなかった。

過酷な現実から逃れられない日々の業務。避難先にした妻真奈美さん(43)の市内の実家に帰ると、妻は泣いてばかりいた。見つかってほしいけど、怖い。どこかで生きているかも-。酒に酔わなければ眠れなかった。

「生活を変えたい」。子どもができればきっと、家庭に笑顔が戻るはずだ。津波には負けたくなかった。

震災から約2年2カ月後、待望の長女が誕生した。名前に「祐」を入れたかったが、字画を大切にしたい。考えた末、「ゆう」と読める「結」を付けた。

祐太君の死亡届は、結美ちゃんの出生届とともに出した。新たな命を守っていく、という決意が前を向く力をくれた。名前を書く手が震えた。

再び子育てが始まり、楽しい時間が増えた。「幸せ」。そう感じると常に祐太君が頭に浮かび「そうじゃない」と気持ちを抑える。

長男大介さん(17)や結美ちゃんが将来結婚し、孫ができたら、もちろんうれしい。でも、手放しで喜べないかもしれない。

そんな思いは、生涯薄れないだろう。親として、子を守れなかった申し訳なさを背負って生きていく。

結美ちゃんは、顔や臆病な性格が、祐太君と似ていると感じる。

「結美は結美」と思いながら、どこかで「生まれ変わり」と思いたい親心がある。娘が「野球をやる」と言ったときは、うれしかった。

震災から6度目のお盆を迎えても、特別な感情はない。

お墓にもいない。「いつも一緒だよ」

長女が生まれた後、妻の実家の庭に、祐太君が一番好きなウルトラマンゼロをモチーフにしたモニュメントを建て、家族の名前を刻んだ。新居の庭が完成すれば移築する。

しばらく迷っていたことがある。事情を知らない人に家族構成を聞かれたら、どう答えるべきか、と。

今は堂々と言える。

「子どもは3人です」

河北新報

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