【東日本大震災】<もう一度会いたい>長男の遺体の涙拭く

◎「土葬にできるかっ」

「大ちゃんらしい遺体が揚がったようだ」

今野ひとみさん(45)=宮城県石巻市=と夫の浩行さん(53)に届いた安否情報は凶と出た。

震災6日目。

長男=当時(12)=の遺体は通学先の大川小の手前ののり面で見つかった。ほかの児童と折り重なって横たわっていたという。

■眠るように

安置所になっている高校に夫と急ぐ。

遺体は塩ビの収納袋に入れられ、体育館の床に寝かされていた。

「大輔」

口を半開きにしている。

眠っているようだ。この子はいつも口をパカーンと開けて寝る。

「寝てるだけなんだよね。起きてよ、ねえ」

肩を揺する。

反応がないと分かっているのに。

おえつが止まらず、息継ぎが苦しい。

ほっぺに手を伸ばす。ひんやりしている。死後硬直はまだ見られず、ぷくぷくしていた。

「土葬なんかにできるかっ」

夫が係の人ともめている。

係の人の話では、震災で油不足になり、市の火葬場が十分に稼働できない。遺体は日に日に増えて処理能力が追い付かず、「仮埋葬」を勧めているという。

「仮埋葬なんて言い方を飾るな。要は一時的な土葬なんだろ?」

夫は食って掛かっている。息子の死に直面し、気が高ぶっている。

夫の怒気に気おされて係の人が折れた。一定期間仮安置が認められ、その間に火葬場を探す。

ドライアイスを葬儀屋さんから買ってきて、遺体の周りに敷き詰める。ドライアイスは需要過多で品薄で、遠くに足を延ばさないと手に入らなかった。

火葬場はどこの市町村もふさがっていた。電話をかけまくって宮城県大崎市の火葬場で空きを見つけた。それでも2週間待ちだった。

翌日から朝一に体育館に寄ってドライアイスを交換し、まだ見つかっていない家族をその足で捜しに出るのが夫婦の日課になった。

大輔君の遺体は冷やし過ぎでカチンカチンになっている。

閉じた目の目頭に血の混じった赤い涙がにじんでいる。

かわいそうで拭き取ってあげる。

次の日行くとまた出ていた。

■疑問次々と

残りの家族の捜索は空振りが続いた。

一日の終わりに体育館に舞い戻る。家族の遺体が搬入されていないかどうかを確かめる。

遺体が整然と並んでいる。

首のもげた人がいる。

おむつをしたままの赤ちゃんがいる。

正気では直視できない。感情を殺して1体1体のぞき込む。

大川小の児童の遺体は毎日のように運ばれてきている。

一体何人死んだの?

先生もいたんでしょ?

裏山に逃げなかったの?

児童74人の死亡・行方不明が後に明らかになる「大川小の悲劇」はこの時まだ断片しか分からなかった。

河北新報

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