【東日本大震災】津波にのまれた幼稚園バス 犠牲の園児、絵本の主人公に

【東日本大震災】津波にのまれた幼稚園バス 犠牲の園児、絵本の主人公に

乗っていた幼稚園のバスが東日本大震災津波にのまれ、犠牲になった宮城県石巻市の佐藤愛梨(あいり)ちゃん(当時6)を主人公にした絵本が出版された。

短かった命。でも絵本は語りかける。「6年分の命を たくさん たくさん たくさん生きた。しっかりと生ききった」 

絵本は「あなたをママと呼びたくて… 天から舞い降りた命」。前橋市の絵本作家空羽(くう)ファティマ(本名・関口恵子)さん(52)が手がけた。

昨年3月、テレビで愛梨ちゃんの母美香さん(40)のことを知り、つらさを分かち合えればと、命や愛をテーマにした自身の絵本11冊を送り、「悲しみを癒やせないと承知していますが、寄り添わせてください」と便箋(びんせん)8枚に思いをつづった。

受け取った美香さんは「ずうずうしいかも」と悩んだ末、半年後に絵本づくりをお願いした。

大きな揺れに襲われたあの日。幼稚園バスはおびえて泣きじゃくる子どもたちを乗せて、高台の園から海の方向へ出発した。「だいじょうぶ。こわくないよっ」。バスの中で、愛梨ちゃんはみんなを励ました。

4日後は卒園式。謝恩会で歌おうと、美香さんと練習していた歌を何回も歌った。だが、バスはその後、波にのまれ、火に包まれた。愛梨ちゃんら園児5人が犠牲になった。

先に降りて助かった園児たちの証言などからわかった事実だ。

絵本では、天国に帰った愛梨ちゃんが天使ににっこりとほほ笑む。「たっくさん ママと呼べて うれしかったよ」。もぐもぐ食べたカレーと肉じゃが、ハンバーグ。お絵かきでは虹とハートをよく描いた。

七五三の着物も、用意していたランドセルも、大好きな水色だった。家族に囲まれた幸せな6年間の日々。愛が死にひきさかれることは決してない――。そう語りかける。

全56ページ。表紙の愛梨ちゃんはファティマさんの娘(11)が、中の22枚の絵は前橋市内の子どもたちが手がけた。

裏表紙は、愛梨ちゃんの3歳違いの妹珠莉(じゅり)ちゃん(7)が描いた。森の中で姉と笑いながら手をつないでいる。

美香さんは「同じ悲しみを繰り返させないように、教育関係者に読んでもらいたい。

そして生きたくても生きられなかった娘の話を通じて、命の尊さを伝えたい」。ファティマさんは「温かい思いが詰まった本です。愛梨ちゃんは本の中で生き続けています」と話す。

朝日新聞

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