【東日本大震災】命の限り叫び続けた 防災放送の女性職員、結婚式控え安否不明 母「頑張ったね」

【東日本大震災】命の限り叫び続けた 防災放送の女性職員、結婚式控え安否不明 母「頑張ったね」

大きな揺れの後、津波の来襲と高台への避難をひたすら呼び掛け続けた。

東日本大震災で、津波に押しつぶされた宮城県南三陸町で防災放送の担当職員だった遠藤未希さん(24)。いまだ安否が分からない。  

「しっかり頑張ったね。でも、何も命を張ってまで…」。いたわりと無念さに揺れる母親。秋に結婚式を控え、準備を進めていた。    

「ないよね」。避難所に張り出された身元不明者、死亡者の特徴を書いた紙を指で追いながら、母親の美恵子さん(53)がつぶやいた。

震災から2週間以上が経過し、更新される情報も日に日に少なくなっていく。  

震災翌日から2日間はがれきの中を歩き続けた。「見つけられなかった。自分たちの手ではどうしようもなかった」。隣に寄り添う父親の清喜さん(56)はうなだれた。  

3階建ての防災対策庁舎は津波にのまれ、赤い鉄筋だけが無残に立ち尽くす。   11日、未希さんは2階で放送していた。「6メートルの津波が来ます。避難してください」。

冷静で聞き取りやすい呼び掛けが何度も繰り返された。海岸にいた両親にもその声は届いた。

  庁舎に残った職員約30人のうち、助かったのは10人。高台の高校に避難した人からも波にさらわれる職員の姿が見えた。  

未希さんは勤続4年目の昨年4月、危機管理課に配属された。介護の仕事に就くことを考えていたが、両親の希望を聞き入れ、町職員を選んだ。  

昨年7月に婚姻届を出し、今年9月の披露宴に向け楽しそうに準備していた。景勝地・松島のホテルを早々と予約。昨年12月、初めて衣装合わせをしてみた。「3月にはウエディングドレスの新作が出るの。お母さん一緒に見に行こうね」。そう約束していた。  

美恵子さんは「放送が途中で切れた」と知人に聞かされた。最後の方は声が震えていたという。「放送するのに精いっぱいで、逃げられなかったんだろうね。実際は怖かったと思う。母親の私が守ってあげられなくて。申し訳なくて」  

町は人口約1万7千人。約8千人の所在が分からず、被害の全容はまだ把握できていない。それでも避難所へ逃げた女性(64)は「あの放送でたくさんの人が助かった。  

町民のために最後まで責任を全うしてくれたのだから」と思いやった。

「『ご苦労さま。ありがとう』という言葉をかけてあげたい」と清喜さんは涙ぐんだ。  

「未来の未に、希望の希」。美恵子さんは娘の名前をそう説明した。

壊滅した町には新しい電柱が立ち、がれきの間に道が通るようになった。少しずつだが、未来に向けて動き始めている。  

産経新聞

【スポンサーリンク】

もしこの記事が気に入って頂けましたなら、はてなブックマークやツイッター、Facebook等でシェアしていただけたら嬉しいです。この上無いはげみになります。

関連記事

おすすめ記事

  1. 【東日本大震災】夫の最後の贈り物、指輪に誓う「娘と強く」

    2011-3-20

    【東日本大震災】夫の最後の贈り物、指輪に誓う「娘と強く」

    夫の荷物の中に指輪があった。ホワイトデーのプレゼントに、こっそり買ってくれていたらしい。  …

ピックアップ記事

  1. 【東日本大震災】被災から6年 月命日、母の墓参続け 南相馬・渡辺さん「みんな幸せだよ」
    東日本大震災の津波から孫2人を守りながらも、母を失った南相馬市小高区の渡辺のり子さん(66)は「…
  2. 【東日本大震災】震災で亡くなった娘の夢 67歳の母かなえる
    仙台市青葉区の清水和子さん(67)が27日、看護師の国家試験に3度目の挑戦で合格した。東日本大震…
  3. 【東日本大震災】震災で逝った“お姉ちゃん”との世界旅行
    肩までの髪に、おそろいのワンピースを着た仲よしの姉妹。グアムでは夕陽が沈む海で、イタリアではピサ…
  4. 【東日本大震災】贈る言葉  東日本大震災6年 娘の晃子へ 一年でも長く生きる
    岩手県陸前高田市 金沢善郎さん(86)晃子(当時53歳)、私が仏間にめったに入らないから怒っ…
  5. 【東日本大震災】大震災6年 新たな我が子2人に
    宮城・石巻の小高正美さん、親子4人で歩み始める新しい命に、失った我が子らの思い出や成長を託せるよ…
  6. 【東日本大震災】お婿さんの近況、聞いてみようか
    「僕は成田家の人間ですから」彼は即答した。東日本大震災で亡くなった宮城県石巻市の成田絵美…
  7. 【東日本大震災】人々のつながる場所作り テイラー基金手伝い、生きる励みに
    「恨んでいる相手と一緒にいるのはつらいだろうから、離婚して東京の実家に帰るか?」夫のその言葉…

人気記事

ページ上部へ戻る